あなたは、画家という人間に興味がありますか。
画家は日頃、何を考え、何を感じ、何を目指しているのか、興味がありますか。
画家も、境遇、人間性、知的レベルなど、人それぞれですが、ものを見るということに関しては、ある似通った傾向があると思います。
そこで今回は、画家のものの見方の特徴を中心に、画家は、何を目指しているかについてお話します。
画家が物を見るときのクセ
画家は、普段の日常生活では、ものを普通に見ています。普通に見ているということは、感覚的な印象には特にこだわらずに、いわばパターンで物を見ているわけです。
パターンで物を見るとは、概念との組み合わせで物を見ることです。見ている対象とその名前とのセットで物を見ることです。
この状態は、ものを見ているとは言い難く、ものと名前の組み合わせのパターンを覚えていて、その記憶を使って会話をしたり、行動したりしているに過ぎません。
日常生活はそれで済みますが、画家が物を見るときは事情が違います。
画家には、
- 全体を一つのまとまりとして見る(物と物との関連性が気になる)
という傾向があります。
複数の対象を見るとき、ある物の形と、二つの物の間の空間の形が、いわば、同格に見えるので、全体が一つのまとまりに見えるわけです。すると必然的に物と物との関連性が、気になります。
実際に何かを見たとき、その対象を見ると同時に見られるという感覚を覚えるのです。これは、見るという行為は、見られるという事実があってこそ成り立つと感じているからだと思います。
また、その対象とその周りの空間との関係が気になります。これは、その対象を成り立たせている力と、対象の周りの空間の力とが釣り合っているからこそ対象を見ることができると感じているからだと思います。
いずれにせよ、何かを見たとき、見えるものを成り立たせている見えないものが気になるのです。これは、見えないものがあるからこそ見えるものが成り立つと感じているからです。
画家は何を目指しているのか
・全体を一つのまとまりとしてみる
という傾向のある画家は、見ることそのものが創造的な行為だと思っています。創造的という理由は、見ることによって、内的世界と外的世界とのつながりをつけることができると考えているからです。見ることによって、周りの自然との折り合いをつける事ができると考えているからです。
画家が物を見るとき、内的世界と外的世界との境界点に色を見ていると感じています。目に見えるもの(色)を成り立たせているものは、目に見えないものだと感じています。ですから、何かが目に見えること自体が、目に見えないものの存在を明らかにしていると感じています。
結局の所、画家は、『目に見えるものを掴むには、目に見えないものを掴むしかない』と感じているわけです。 その目に見えないものを掴むために色どうしの関係を利用するのです。 色どうしの関係がうまくいくと、『内的世界』と『外的世界を成り立たせている目に見えないもの』との間につながりがついたように感じるのです。
抽象的な説明でわかりにくかったと思います。すみません。もう少しお付き合いください。
画家は、『目に見えるものを成り立たせている目に見えないもの』を掴むには、色が重要な鍵を握っていると感じています。
つまり、目に見えている色どうしの関係がうまくいくと、目に見えないものをつかめると感じているのです。 色どうしの関係がうまくいくとは、『対立する力同士が、互いに損なうことなく、支え合っている』という関係が成り立つことです。 画家は、色によるこの関係を実現することを目指しています。
色どうしの対立関係が解消されたとき、画家は、そこに美を感じます。 これが、画家が絵を書く理由の一つです。
もちろん、線を主要手段として、この対立関係を解消しようとする画家もいると思います。 画家が絵を描く表面的な理由は、人それぞれだと思いますが、いずれにせよ、根本的な理由は、内的世界と外的世界とのつながりをつけることです。
*表面的な理由のいくつかを挙げてみます。
- 意味を伝える(象徴的な意味をもたせたものや、約束ごととしての型を利用する)
- 目の楽しみを提供する
- 非日常性を提供する
- 感覚の広がりを提供する
- 心の安定の助けになるものを提供する
- 装飾的な美を提供する
まとめ
画家が目指していること
・『内的世界』と、『目にみえるものを成り立たせている目に見えない世界』とのつながりをつけること
それを実現する方法
1.『内的世界』と『外的世界』との境目に存在している色を捉える
2.その色どうしの関係を、『対立する力同士が、互いに損なうことなく支え合っている』という関係にする
画家の主張、本音
画家は、個人的な観察の単なる記録者ではありません。人が何かを観察し、その結果を記録するだけなら、図解入りの、言葉による説明のほうが、はるかに目的にかなっていると思われます。 言葉で説明するほうがうまくいくことは、画家の仕事ではありません。
画家の仕事は、あくまでも絵を描くことです。絵画でしかできないことを伝えることです。 たとえ表面的には、意味を伝えることを目的とするときでも、そのことに変わりはありません。
絵画にしかできないこととは、ものを見るための助けになるものを実現することです。 これは、『内的世界』と『外的世界』とのつながりをつけることです。
画家は、ものを見るとは『内的世界』と『外的世界』とのつながりをつけることだと考えています。 画家は、ものを見ることを通して感じたことを実現しようとします。 このことは、写実絵画であろうと抽象絵画であろうと、変わりはありません。 画家は、ものを見たからこそ絵を描くのです。 決して頭の中での勝手な空想から始まることはありません。見たことを実現するために絵を描いています。
画家が紙やキャンバスといった平面上で、自分が見たことを実現しようとする時、画面は現実とは別のもうひとつの世界です。
この世界では、自由な強調やデフォルメなどが可能です。
そして、画面という現実とは別のもう一つの世界をみたときの感覚が、ものを見るための助けになると考えています。
『ものを見るための助けになるものを実現すること』
これが、本質的な意味での、画家が目指すことです。
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